2月16日(土)に第5回犬吠埼灯台乙女養成講座が開催されました。今回は6回の講座のうち唯一全員参加で作業をするワークショップ形式を取りました。当日は、30名の参加者が4テーブルに分かれ、予めテーブル毎に配分されていた2つの演習課題(各1テーマ)について意見を出し合いました。参加した皆さんの意見は既に集計が終わり、公的には行政の窓口である銚子市の観光商工課や教育委員会文化財担当者へ提出しました。これらの意見を灯台の保存活用や11月に予定されている灯台ワールドサミット in 銚子の開催に向けて、プラン作りの参考にしていただきたいと思っています。
犬吠埼灯台の保存活用について、私が特に関心を持っているのは、「霧笛の再吹鳴」と「レンガ造灯塔の二重壁構造の見える化」の二つです。二つとも実現にはいくつかの問題をクリヤーしなければなりません。ワークショップでは、バズセッション方式を採り、他人の意見に対しては反対や批判をせず、ポジティブな意見をできるだけ多く出していくというルールで進行し、以下のような論点はあえてスルーしています。
たとえば、霧笛に関してですが、いろいろな機会に霧笛をもう一度鳴らすことはできないか」という声を耳にします。岬の突端という犬吠埼の自然環境の中で、国の登録文化財でもあるオール鉄製の旧霧信号所の建物(1910年3月完成)を保存し、機械装置を稼働状態に維持するには、「定期的な補修」やそのための「財源の確保」、操作できる「人材確保」、「関係諸機関(銚子市や海上保安庁)との調整」が必要になります。
また、犬吠埼灯台は明治初期の代表的なレンガ造灯台ですが、外見からは文字どおり白亜の灯台であり、灯塔の内側もどこにもレンガ積の様子を見ることができませんし、現状では資料室等に材料のレンガ石が数個展示されているだけです。
実は出雲日御碕灯台、尻屋崎灯台、御前埼灯台は煉瓦構造を見ることができるようになっています。写真は、日本一の高さを誇る島根県の出雲日御碕灯台(石とレンガの二重壁構造)ですが、昭和後期の大規模改修時にこのように本格的に実施されています。御前埼灯台では、一昨年の補強工事の際レンガの積み方を見ることができるガラス窓が灯塔内部に設置されました。(二重壁構造は確認されましたが、見える化はされていません)
犬吠埼灯台の場合は、重要文化財の「犬吠埼灯台図」(1872)には二重壁構造が図示されているものの、昭和62年(1982)の大規模改修工事では二重壁構造の事実確認もされなかったようです。犬吠埼灯台の場合、今後、文化庁所管の登録有形文化財に既に登録されているため後からどの程度の改造が可能か、改造後も建造物の強度を確保できるか等々、制度的・技術的な問題をクリヤーする必要がありますが、いつかは実現していただきたいと思っています。
〇 ワークショップで出された主な意見(カッコ内の数字は同じ内容の意見数)
①-1犬吠埼灯台の魅力に関しては、圧倒的に灯台の景観(外形の美しさ)が多く(13)、さらに灯台を含む周辺の景色や自然をまるごと素晴らしいとするもの(5)を加えるとかなりの数字(23)になりました。その中には、白亜の灯台や白い郵便ポストがらみでイメージカラーとして「白」色や(3)、海の「青」色も含まれています。その後に、灯台へのアクセスのよさ(3)、灯台にのぼれる(2)ことなどが続きます。
①-2犬吠埼灯台の価値に関しては、歴史がある(7)、保存状態がよい(2)、日本で5基しかない一等灯台(レンズ)のひとつ(6)、資料館が複数ある(3)、現役の航路標識として機能している(4)、文化財(灯塔と霧笛舎)が2つあ(2)、銚子のシンボルになっている(3)
② -1犬吠埼灯台の「保存」に関しては、霧をもう一度鳴らしたい(3)、灯塔のレンガ二重壁構造の見える化(2)、レンガ積みの体験(2)、灯台周辺の遊歩道や灯台への狭い進入道路の整備(4)、白いポストの聖地化(1)
② -2犬吠埼灯台の観光「活用」に関しては、灯台や灯台守の記録映像等が見られる装置(3)、SNSやインスタの活用によるPR(2)、フォト・コンテスト(ドローンによる撮影を含む)、灯台の周りに音声ガイド設置(1)、資料館内に案内人配置(1)
③ 灯台ワールドサミット in 銚子のプログラムに関しては、市民参加のイベント(4)、写真コンテスト(3)、灯台の模型作り(2)、ランタンを作り、飛ばす(2)、各種ツアーの実施(2)、サンマ型のぼりを揚げる、公募絵画作品を灯塔に投影、灯台物語をつくり朗読劇化・ツアー化、灯台クイズ、灯台グッズをつくる等々。
④ 灯台ワールドサミット in 銚子のおもてなしに関しては、おいしい食べ物の提供(16)、各種オプショナルツアー(9)、郷土芸能の披露(5)、海から灯台を見るツアー(4)、灯台の夜間公開(3)プロジェクションマッピング(4)、霧笛を鳴らす(2)、レンズ磨き体験(1)