2021年3月22日、犬吠埼灯構内にある灯台資料展示室で同灯台の重要文化財指定書授与式が執り行われました。銚子市長、教育委員会文化財担当、銚子海上保安部職員、犬吠埼ブラントン会代表幹事等の立ち会いの下、国に代わって銚子市長から灯台を管理する銚子海上保安部樺澤部長に指定書が伝達されました。式では越川市長、樺沢部長、(公社)燈光会今井専務理事、犬吠埼ブラントン会代表幹事の祝辞が披露され、短時間ながらテンポよく式を終えました。以下は犬吠埼ブラントン会代表幹事の祝辞です。
犬吠埼灯台他重要文化財指定書授与式祝辞
「犬吠埼ブラントン会の仲田です。このたび現役の航路標識犬吠埼灯台と旧霧信号所霧笛舎他が国の重要文化財に指定され、本日ここに晴れて指定書授与式を迎えられましたこと、真におめでとうございます。
全国にほぼゝ明治期の灯台が現存する中で、犬吠埼灯台がそれらの先陣を切って重要文化財に指定されたのは、何よりもまず法律で定められた選定基準の内、技術的優秀性や歴史的重要性を高く評価されたからですが、指定までの道のりにおいては文化庁や文化審議会のお眼鏡に適ったことに加え、所有者である海上保安庁や(公社)燈光会が灯台施設の保存・活用にむけて一段と懐の広さを示され、さらにまた所在地の千葉県や銚子市が地道で適切な対応をされたこと等々、それぞれの善意と努力が絶妙にマリアージュして実を結んだということも見落とせない事実でしょう。これら関係者の皆様には、改めて敬意を表したいと思います。
実は、今回指定された犬吠埼をはじめ角島・六連島・部埼の4灯台には共通点があります。それはブラントンという隠し味です。いずれの灯台も、明治元年に来日し、日本の沿岸に西洋式の灯台を建設したスコッランド人の土木技師で、後に「日本の灯台の父」と呼ばれたリチャード・ヘンリー・ブラントンの主導によるものなのです。私どもといたしましても、団体の名称にブラントンの名を拝借し、20数年来ブラントンを追いかけ、調査・研究や顕彰活動をしてきたこともあって、重文指定の報せを聞き感慨も一入でございました。
ところで、灯台研究の権威が太鼓判を押しているように、オリジナルな灯台と霧笛舎、いわば主役と脇役が揃っている舞台は、日本では犬吠埼しかありません。この立派な舞台でこれから何をどう演じるか、それは早晩私たちに向けられた課題として浮かび上がってくるように思います。
一方で、近年航路標識法の改正等により公的な灯台施設を民間が活用できる可能性は一段と広がりつつあるように思われます。このかけがえのない文化遺産を未来につないでいくためには、私たち地域の側も、活動の担い手の世代交代や新しいコミュニケーション・ツールの採用、活動組織の拡大・再編成なども視野に入れながら、この変化の潮流にジャスト・ミートしていくことが大切だと思っています。
終わりに、明治初年以来140数年の長きにわたり、大勢の「ごく普通の人々」が、犬吠埼灯台という「唯一無二の偉大な遺産」を守り残してくれたことに対し、心から深甚なる敬意と感謝を申し述べ祝辞と致します。」
※ 写真は,灯台前での記念撮影。