野島埼の霧笛舎が解体に‼

野島埼の霧笛舎が解体に‼

灯台150周年記念式典(11/1)の会場で、野島埼灯台の霧笛舎(千葉県房総半島の南端)が近く解体されることを知りました。それも、3日、4日の同灯台特別公開後間もなくだというのです。
 野島埼灯台へは、私もこれまでに何度か行ったことがありますが、かなり前から霧信号所は閉鎖されており、建物の周囲には草木が生い茂っていて中をのぞくこともできない状態でした。
 今回、その霧笛が跡形もなくなってしまうと知ったからには矢も楯もたまらず、犬吠の霧笛を録音していただいたW君を誘って見てきました。3日当日は、野島崎灯台と同じく犬吠埼灯台も特別公開日でしたので、片道4時間ほどの道のりを往復、犬吠埼の行事にも間に合い、銚子海上保安部の皆さんに野島埼霧信号所の解体前の現況報告や千葉海上保安部や日本航路標識協会(JANA)、(公社)燈光会の方々のメッセージをお伝えすることもできました。

 野島埼の旧霧笛舎は、最終調査や公開日に備えて、可能な限り整理されていましたが、鉄筋コンクリート2階建ての霧笛舎には、あたかも砲撃を受けたような鉄筋むき出しの大穴がいくつも開いており、屋内のエア・サイレン機器や配管・鉄製の階段も真っ赤にさびていて、ゾロリと崩れ落ちそうな状態でした。
 解体後は、ラッパと吹鳴器が資料館に展示される予定とか。また、日本航路標識協会等が調査報告書をとりまとめ中とのことで、学術調査の記録が残ることはせめてもの救いです。

 野島埼のエア・サイレン装置は、犬吠埼の装置と比較すると、同じ方式なのですが、多くの違いが見られます。ザックリいえば、野島埼のエア・サイレンは、戦前から戦後初期にかけてのもので、犬吠埼の一つ前の形式と推測されます。
 まず、原動機については、モーターおよびディーゼル・エンジンという正副2系統になっており、基本的には同じ構成なのですが、原動機から圧縮空気を作るコンプレッサーへ動力を伝える方式が大きく異なっています。野島埼では、長い幅広の布ベルトで原動機から動力をコンプレッサーへ伝える方式になっていましたが、これは戦前の犬吠埼霧信号所の絵葉書や写真等でよく見られるものです。また、大量の圧縮空気をあらかじめ貯めておく貯気タンクの数は、犬吠が5基なのに対して野島埼は2基でした。そのほか、ガラスの扉のついた古い家具を思わせる電気制御盤や壁に取り付けられたコンプレッサーへのオイル供給タンク、圧縮空気を階上の吹鳴器まで送る空中配管などに違いが見られました。ラッパは2階の屋根から屋外に突き出ていましたが、肝心の音を発する吹鳴器は、犬吠埼と同様ラッパと一体になっている送音管の末端に取り付けられたまま残っていました。それは縄できつく縛られ、かろうじて脱落しないでいる痛ましい状態でしたが、ピカピカに磨き上げた予備の吹鳴器(真鍮製)を海上保安部の若い職員の方が展示用に持ってこられた時は感激ものでした。
 ちなみに、野島埼霧信号所の吹鳴は、55秒を隔てて5秒吹鳴だったということです。

About the Author

Comments are closed.